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Nishikenのホームページ

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サンガンピュールの物語(生い立ち編)1話

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 時はミレニアム。21世紀へのカウントダウンが進行中であった。新しい世紀に向けて、世界中の人々は希望を抱いていた。自分の可能性を極めること、できないことができる世の中になること、そして平和な世界が実現できること…。たくさんの人々がそれぞれの思いを馳せていた。
 このフランス人の少女も例外ではなかった。中部・リヨンに住むこの少女。年は10歳くらいだったろうか。とにかく明るい性格で両親からも好かれていた。将来はお花屋さんになりたいとも語っていた、ごく普通の女の子であった。後に落雷に遭遇するまでは。

 ロンドンでの少女

 約5年前のある日、少女は両親と共にロンドンへ旅行に行った。それまで遠いところといえばパリしか行ったことのなかった彼女。彼女自身初の国外旅行だけあって、大いに楽しみにしていた。ロンドンではテムズ川の畔の公園で遊んだり、2階建てバスに乗ってはしゃいだりして、とにかく楽しんでいた。しかしこの旅行は、彼女の人生をゼロからリセットするのと同じように、大きく変えてしまった。
 旅行の3日目だっただろうか、晴れていたロンドンの街は突然の豪雨に見舞われた。雷も鳴り始めていた。この日の朝は快晴だったから、雨なんか降らないだろうと思い、彼女の家族の誰一人傘を持っていなかった。豪雨に見舞われた少女は両親の後を追って、傘も差さずに走って街中からホテルに戻ろうとしていた。その時、彼女は落雷に遭ったのである。ドカーンという衝撃音が彼女の身体に直撃したのである。しかも親の不手際などで意識不明となったことが、彼女の運命を大きく変えてしまった。
 両親は大いに心配した。しかしその雷は、少女に超能力を与えた。そしてそれと同時に顔も変形していった。まるで、パワーパフガールズのように。落雷に遭遇するまでは、世間の女の子と同じような普通の体格だった。しかし落雷により、身体の中の物質が特殊反応でも示したのであろうか、顔は大きくなり、手足は特殊な形に変形した。

 それから1週間が経過した後、意識が回復したものの、両親は少女の変貌ぶりに大いに驚いた。こんなの自分たちの子どもじゃない!そう感じざるを得なかった両親からは、彼女の想像しえなかった冷酷な言葉がこぼれた。
 「目だけ異様に大きくて、みっともない顔だ」
 「汚い。クズだ」
 と彼女は言われた。サルコジみたいな自分の個性を認めない発言をする、心無い両親に対して少女は大ショックであった。
 
 無事、病院を退院できたものの、外見が全く違う人間になった少女は両親からも見捨てられ、1人でロンドンの街をさまようことに…。彼女はもう、普通の女の子ではなくなったのである。その後、幼い体格ながらスラムでの生活を余儀なくされた彼女。慣れないロンドンの街でのホームレス生活。母国語であるフランス語は使えず、英語の能力も自信がなかった。どれだけ危ない目に遭遇したか。どれだけ生きるのに必死だったか。知らない不良者にレイプされそうになったこともある。彼女にとってロンドンの街は、自分が変身する前の天国みたいな都会ではなく、地獄以外の何ものでもなかったのだ。

 (第2話へ続く)


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